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【感想/あらすじ】ノーサイド・ゲーム/池井戸潤:原作ネタバレ、結末は?

こんにちは、いたる(@mixart_twit)です。

ラグビーを題材にした、池井戸潤さんの新作「ノーサイド・ゲーム」が6月13日に発売。

池井戸さんといえば、ドラマに映画と大ヒットを連発、次々に作品が映像化されています。

 

今回題材になっているラグビーは、9月に始まるワールドカップの影響もあり2019年注目のスポーツ。

「ノーサイド・ゲーム」は、不振にあえぐ社会人ラグビーチームの再建を託された、主人公の奮闘を描いた作品です。

 

 

それでは早速、「ノーサイド・ゲーム」の感想、あらすじを紹介していきたいと思います。

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『ノーサイド・ゲーム』の感想

『ノーサイド・ゲーム』

主人公の君嶋が、チームのゼネラルマネージャーとしてチームに携わり、経営理論を活かしチームを再生へ導いていきます。

直接指導するわけではなく、チームとしての活動を通して再生していく過程は、熱血モノとは違った面白さがありました。

 

企業の資本に依存している社会人ラグビーの宿命、近年話題になったスポーツ協会との確執など、アマチュアスポーツを取り巻く環境や問題が分かりやすく描かれています。

バブル崩壊後の不景気による社会人野球の縮小と似たものを感じました。

 

作品の中には、ラグビーの試合の場面が良く出てきます。

文章だけで試合の情景が目に浮かんでくる表現力は流石。

僕はラグビーのことは少ししか分かりませんが、そこで観ているかのような感覚で試合内容に引き込まれていきました。

 

左遷される形でラグビーチームを任された君嶋の前には、トキワ自動車の営業本部長・滝川が立ちはだかります。

池井戸作品に必要不可欠な天敵の存在です。

 

滝川に対して君嶋は、様々な問題を抱えながら立ち向かっていく展開ですが、今作はそれだけでは終わりません。

会社のことを考えているもの、自分のことだけを考えているものの明暗がはっきりと分かれ、モヤモヤもなくスカッとする内容です。

 

「ノーサイド・ゲーム」は、ラグビーチームの再生としても、主人公が会社内の悪に立ち向かう作品としても楽しめます。

2019年はラグビーワールドカップが日本で開催され、とても注目度の高い題材ですので、ぜひ手に取ってみてください。

 

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『ノーサイド・ゲーム』のあらすじ

『ノーサイド・ゲーム』のあらすじ

君嶋隼人は、トキワ自動車の経営戦略室の次長として大型買収案件に関わっていた。

今回の買収を先導していたのは、営業本部長の滝川。

 

滝川の進めるカザマ商事の買収の予算は一千億円にもなり、君嶋の調査ではのれん代を高く見積もったとしても高すぎる内容だった。

買収による相乗効果を訴える滝川に対し、君嶋は買収に否定的な意見書をまとめ取締役会に結論を委ねることに。

その後、滝川のメンツをかけた買収案は取締役会で退けられ消滅した。

 

買収案が退かれてから3ヶ月程たったある日、君嶋は人事部に呼び出され横浜工場への転勤を命じられる。

総務部長という役付ではあったが、明らかな左遷人事であった。

 

いつもと違う通勤風景をぼんやりと眺める君嶋。

トキワ自動車で22年もの間、本社で辣腕を振るってきた君嶋にとっては、横浜工場の総務部長というポストはすぐには受け入れらないものだった。

 

横浜工場は、小型エンジン全般の製造を一手に引き受ける主力工場であり、社会人ラグビーチーム「アストロズ」を抱えている。

引継ぎをしている最中、前任の吉原から「ラグビーは好きですか?」と聞かれる君嶋。

 

実は、横浜工場の総務部長には、「アストロズ」のゼネラルマネージャーを兼務するというもう1つの顔があった。

「アストロズ」は、プラチナリーグに所属する古豪。

しかし、ここ数年の成績は低迷しており、チームの現状を聞けば聞くほど、意識の低さやずさんな経営状況が浮き彫りになっていく。

 

「アストロズ」の存在は知っていたが、君嶋はラグビー素人。

はたして、「シロウトゼネラルマネージャー」にチーム再生はできるのだろうか。

君嶋の「アストロズ」再生への戦いが幕を開ける。

 

原作のネタバレ・結末はページの最後に記載しています。

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『ノーサイド・ゲーム』の口コミ

口コミ

 

TBS日曜劇場で7月7日よる9時ドラマスタート

 

「ノーサイド・ゲーム」は、TBS日曜劇場の枠で7月7日よる9時からドラマがスタートします。

主人公の君嶋を演じるのは、池井戸作品初出演の大泉洋さんです。

 

ドラマ主題歌は、米津玄師さんの最新曲「馬と鹿」

聞き逃した方は、Paraviでドラマを配信しているのでチェックしてみてください。

 

参考 日曜劇場『ノーサイド・ゲーム』TBSテレビ

 

 

主なキャスト

  • 君嶋隼人 / 大泉洋
  • 君嶋真希 / 松たか子
  • 島本 博 / 西郷輝彦
  • 風間有也 / 中村芝翫
  • 滝川桂一郎 / 上川隆也
  • 佐倉多英 / 笹本玲奈
  • 紫門琢磨 / 大谷良平
  • 岸和田徹 / 高橋光臣
  • 浜畑 譲 / 廣瀬俊明

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「ノーサイド・ゲーム」の見逃し配信していて、第1話から観れるのはParaviだけ。

 

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『ノーサイド・ゲーム』の原作ネタバレ・結末

ここから先は、原作の内容を結末まで紹介しています。

ネタバレが嫌な方は、そっとブラウザを閉じるか他の記事を読んでね。

 

ノーサイドゲームネタバレ

 

ノーサイド・ゲームの主な登場人物

君嶋 隼人トキワ自動車アストロズ・ゼネラルマネージャー
島本 博トキワ自動車社長
滝川 桂一郎トキワ自動車営業本部長
脇坂 賢治トキワ自動車経営戦略室長
藤島 レナトキワ自動車海外事業部員
紫門 琢磨アストロズ監督
佐倉 多英アナリスト
岸和田 徹キャプテン(ナンバーエイト)
浜畑 譲選手(スタンドオフ)
七尾 圭太選手(スタンドオフ)
里村 良太選手(スクラムハーフ)
佐々 一選手(スクラムハーフ)
友部 祐規選手(ブロック)
岬 洋選手(フルバック)
津田 三郎日本モータース・サイクロンズ監督
富永 重信日本蹴球協会会長
木戸 祥助日本蹴球協会専務理事

 

【第一部】ファースト・ハーフ

工場の近くにある、アストロズ行きつけの居酒屋「多むら」に集まるアストロズのメンバー。

当然、話題になるのはシロウトゼネラルマネージャー・君嶋のことだ。

 

日本代表にも選ばれたことのある浜畑をはじめ、チーム全員が君嶋にチームを本当にまとめられるのかを不安に感じていた。

チームの低迷は、日本代表を目指す面々にとっては死活問題。

いつもはチームをまとめているキャプテン・岸和田も、迫る危機的状況への解決策は何も出てこなかった。

 

翌朝、昨日よりも早く出社した君嶋は、前任の吉原からいまだ決まっていない後任の監督の人選を頼まれる。

候補は、監督歴十五年の竹原と昨年選手を引退したばかりの高本の二人。

とりあえず面談のアポは取ったものの、君嶋にはどちらも決め手がなく決めあぐねていた。

 

しかし、アストロズの問題はこれだけではない。

監督人事同様に重要なチーム予算だが、これが君嶋の想像をはるかに超える十六億円近い大赤字だったのだ。

 

 

君嶋は、同じ総務部でアストロズのアナリストでもある多英に手伝ってもらいながら、なんとか予算の作成。

経理部を経て取締役会で説明をするも、これだけの赤字予算に反対者が出ないはずもなく、特に滝川が大反対にあう。

 

滝川の的を得た指摘に反論できずにいた君嶋だったが、ラグビーを信仰する社長・島本の鶴の一声でなんとか予算は承認されたのだが、問題は何一つ解決してはいなかった。

君嶋とアストロズのメンバーは、まずはイベントや地域交流をしてファンを獲得することから始め、チームを変えていく決意をする。

 

 

チームが変わろうと動き出したころ、君嶋はまだ結論の出ない監督人事で頭を悩ませていた。

監督に変わったことによる実績など、過去のデータを集め活路を見出そうとする。

 

様々な情報の中から見えてきたのは、過去に優勝へ導いた経験のある監督。

そのような監督こそ、今のアストロズに相応しいのではないかと考えた。

 

そんなとき、あるニュースが耳に入る。

城南大学ラグビー部を三連覇に導いた紫門監督が、OB会で突然更迭されたのだ。

 

城南大学は君嶋の母校、そして紫門と君嶋は同期。

同じクラスということもあり、ラグビーに縁のなかった君嶋でも紫門の名前は知っていた。

 

クーデターのように監督を更迭された紫門の身分は空いているのでは。しかも城南大学を三連覇に導いた実績もある。

君嶋は、紫門こそまさにオファーするべき相手で、アストロズの監督に呼べないかと本気で考え始めていた。

 

 

紫門に連絡を取ろうと大学に連絡先を聞くが門前払い。

そんななか前任の吉原が残していった名刺の中に、城南大学ラグビー部関係者を見つけ連絡を取る。

断られることも覚悟していたが、ラグビーに関する事ならと紫門のスマホの番号を教えてくれた。

 

すぐに紫門に電話をかける君嶋。

しかひ、紫門は電話に出てくれたものの、監督の話をしたとたん即断られてしまう。

吉原に事情を聞くと、過去にトキワ自動車の方から紫門の監督要請を断った経緯があった。

 

 

その日、君嶋と多英は新横浜駅まで紫門を迎えに行っていた。

監督要請を断られた後、君嶋は紫門に詫び状という名のラブコールを送り説得。

直接会う約束を取り付けていた。

 

大学以来の再開となった君嶋と紫門は、昼食を一緒に取った後横浜工場へと向い監督要請の本題へ入る。

二年で優勝争いができるチームにする、練習内容には一切口を出さない。という条件のもと、紫門はアストロズの監督要請を承諾。

新生アストロズがここに誕生した。

 

 

2月最初の金曜日、紫門監督の就任会見に駆けつけた報道陣は百五十社。

まばゆいフラッシュの中、「優勝争いできるチームにする」という豊富で会見は締めくくられた。

 

ついに始動した新生アストロズは、ボランティアなどによる地域貢献と紫門独自の練習に戸惑いながらも、課題に向き合う日々を過ごしていく。

そんな中、5月の練習試合では二部リーグの格下相手とはいえ、五十点差をつけ快勝。

アストロズは、スキルやフィジカルはもちろん、精神的にも大きな成長を遂げていた。

 

 

君嶋が理想とするアストロズへ近づいてはいたが、その理想はアストロズだけでは完結しない。

プラチナリーグ全体、それを傘下に収める日本蹴球協会まで巻き込んだ改革が必要だった。

 

地域密着型チームの定着、チケットの販売方法、ラグビー人口の裾野拡大、チーム採算の黒字化と問題は山積み。

君嶋は、それらの問題を解決するために提案書を作成し、日本蹴球協会へラグビー界の改革を提案する。

 

しかし、今まで現状を放置し改革のかの字も知らない日本蹴球協会を動かすことは難しく、君嶋の提案は体よく退けられてしまう。

日本ラグビー界の未来よりも地位や権力にすがる協会の面々、これこそが日本ラグビー界のまぎれもない現状だった。

 

 

開幕を間近に控えた八月の練習試合。

君嶋が見ても、アストロズの攻撃はスムーズとはいえなかったが、5月の頃よりも遥かに動きもよく安定していたように見える。

しかし、どのポジションの選手にもパススキルを要求する紫門のラグビーを前に、アストロズは壁にぶつかっていた。

 

開幕が近づくにつれ、壁を越えられないチームはナーバスになっていく。

本当に紫門の標榜するラグビーは可能なのか。自分たちが下手なのではなく、そもそも要求が過剰なのではないか。

苦しむ選手たちをよそに、開幕戦の日があと十日に迫ってていた。

 

 

真夏の熱気を残す、八月最後の土曜日。

ミーティングルームで、初戦・東埜建設工業タイタンズ戦のゲームプランを最終確認する選手たちの表情は一律に硬さが目立っていた。

 

選手たちのウォーミングアップが始まり午後七時を過ぎた頃、試合に向け集中していた選手たちが、ふとスタンドに目を向け、動きを止めて立ちすくみ驚きの表情を浮かべる。

試合開始を前のスタンドにどんどん客が入ってきている。

あっという間に半分近い席が埋まり、その勢いは衰えそうになかったのだ。

 

実はこの日、チケットは前売りで一万二千枚売れており、アストロズファンクラブを窓口として販売したチケットは七千枚近い。

ボランティアやイベントに可能な限り参加し、名前を売り勧誘した選手たちの巻張りが実った瞬間だった。

 

これまでやってきたことは無駄じゃない。選手たちの表情はまるで別人だった。

「勝つぞ!」

選手たちの雄叫びが、ロッカールームに轟いた。

 

 

アストロズは、初戦のタイタンズ戦に勝利。

第四節では、優勝候補の一角ファイターズ戦にも三十四対十四で勝利し、快進撃が続いていた。

 

続く第五戦も勝利したアストロズの次節の対戦相手は、津田率いる優勝候補サイクロンズ。

最終第七節がどちらも格下相手のため、事実上の一位を決める大一番。

チケットは全席完売。相手にとって不足はない。最高の舞台が整った。

 

 

試合は、サイクロンズのキックオフで午後二時に始まった。

開始から一進一退の攻防が続き、息苦しいほどの緊張感がラグビー場を支配しはじめた。

 

そんな中、先手を取ったのはサイクロンズ。

ディフェンスの隙を突かれ、先制トライを決められてしまう。

与えられたコンバージョンキックも決められ、七点を先制された。

 

サイクロンズの攻撃は鋭く、しかも重層的。

アストロズは攻め込まれる時間が長くなっていた。

 

ハーフタイムを迎えた時点で、スコアは七対二十一。

その点以上に、力の差を感じた前半となった。

 

後半、反撃に出るアストロズがとった作戦は大胆な選手交代に打って出た。

新人の友部と、日本代表経験もあるスクラムハーフの里村を下げ、新人の佐々を投入。

スタンドから落胆の声が聞こえるほどだった。

 

しかし、周囲の予想とは裏腹に、思い切った選手交代と選手交代による作戦変更の効果はすぐに出た。

相手の突進を早く摘み取り、反則を誘いペナルティゴールで十対二十一と十一点差に詰め寄る。

そして、アストロズに後半最初のトライが生まれ、十七対二十一を四点差に迫ったのだ。

 

試合は終盤。ラストプレーを告げるホーンが鳴り響く。

サイクロンズのディフェンスラインが乱れ、空いたスペースにボールを抱えた岬が突進。

しかし、サイクロンズのでフェンスが、渾身のタックルで岬を倒す。

 

岬が倒さながらゴールラインぎりぎりのところにグラウディングした。

が、レフリーの笛はならない。

俯いた君嶋に、フルタイムの笛が聞こえたのはその時だった。

 

 

サイクロンズに敗れたアストロズは、プレーオフに進出したものの三位という成績で今シーズンを終える。

一方のサイクロンズは、プレーオフ決勝まで駒を進め、見事優勝を果たしていた。

 

シーズンも終了した十二月下旬。

君嶋はかつての上司・経営戦略室長の脇坂から話したいことがあると本社へ呼び出された。

 

本社を訪ねた君嶋に、脇坂は経営戦略室へ戻ることを打診する。

君嶋が理由を聞くと、一度はなくなったカザマ商事の買収案件、そう君嶋が左遷される原因となった案件が復活したという。

 

カザマ商事が買収価格を800億円まで下げてきたことで案件が復活し、取締役会でも承認される可能性が高い。

買収後の人員不足を補うために、脇坂は君嶋に声をかけたのだ。

しかし、横浜工場の仕事もアストロズの再建も途半ば、脇坂の提案に君嶋は回答を保留する。

 

君嶋が横浜工場に戻ると、すぐに紫門との打ち合わせに入った。

「もうひとり、トキワ自動車に入社させたい奴がいる」

君嶋は人員の追加を紫門から頼まれる。

 

二年目の来季優勝するには、協力な補強が必要になると紫門は考えていた。

絶対に必要な人材だという紫門のひと言に、君嶋は人事部へ掛け合うことを約束する。

 

紫門との打ち合わせ後、君嶋は空いている応接室に入るとスマホで脇坂へかけた。

「横浜工場、アストロズを見捨てて戻れません。」

それが君嶋の脇坂へ対する回答だった。

 

【第二部】ハーフタイム

一月末日、君嶋は新予算案を携え再び取締役会に出席した。

予算額は、昨年とほぼ同額の十六億円。

これにまたしてもケチをつけたのは滝川だった。

 

「三位。平均観客動員数七千人超。それで?いくら収支は改善したんだ」

滝川は神経質そうに予算案を指で叩く。

 

収支は改善したといっても五千五百万円。

協会から安く仕入れ、利益を乗せ販売したチケットの差額分のみ。

協会へ提案した改革案は受け入れられず、アストロズだけの頑張りではこれ以上はどうしようもなかった。

 

君嶋は予算の承認をお願いするも、そこに立ちはだかる滝川。

ラグビー部の存在意義、十六億円も投資することが本当に正しいことなのか。

君嶋は滝川の正論に、反論すらできなかった。

 

そんなとき、社長の島本の救いが入る。

ラグビーを敬愛する島本の鶴の一声で予算案は強引に押し通され、君嶋はなんとか予算案を通すことができた。

 

君嶋が横浜工場へ戻ると、岸和田と多英が待ち構えていた。

ふたりは予算案が通ったことに安堵の表情を浮かべる。

 

そのとき、岸和田が意外なことをいった。

カザマ商事が扱っているバンカーオイルが、座礁事故を起こした船のエンジントラブルの原因ではないか。

という情報を耳にしたというのだ。

 

岸和田に情報を伝えたのは、研究所の同期である星野という男。

横浜工科大学の森下教授から依頼を受け調査をしたところ、事故との因果関係が認められたという。

 

これが事実であれば、カザマ商事は損害賠償が請求される可能性が高く、巨額の訴訟リスクがあることになる。

君嶋が滝川と衝突したのは一年以上前のことだが、少なくともそのときにはそんな話はなかった。

 

 

翌日、君嶋と岸和田はトキワ自動車研究所の向かった。

研究所の星野は調査前に、カザマ商事と座礁事故を起こした白水商船との関係については知らされていなかった。

詳しい話を聞くと、因果関係ありという結果にもかかわらず、トキワ自動車がカザマ商事を買収するという発表に驚き、岸和田へ話したようだ。

 

君嶋は森下教授に話を聞くために、横浜工科大学へ向う。

いかにも大学教授といった風貌の森下は、部屋へと訪ねて来た君嶋をにこやかに向かい入れた。

 

君嶋はさっそく本題に入り、カザマ商事のバンカーオイルと事故と因果関係について聴く。

すると、森下からは「因果関係はなかった。研究所に依頼したのは別のバンカーオイルのサンプル。」という返事だった。

 

 

森下教授を訪ねた翌週、横浜工場のゲートに、幟を持った数十人が詰めかけ口々に何事かを叫んでいた。

対応していた守衛によると、ゴルフ場建設反対派の集団らしい。

 

心当たりのない君嶋は、代表者に何事かを聴くと、カザマ商事が建設中のゴルフ場の反対運動だという。

カザマ商事では話にならず、買収予定のトキワ自動車へ抗議に来ていたのだ。

 

君嶋の冷静な対応により、騒動は収まり反対派の一団は引き上げていったのだが、佐々からゴルフ場について新たな情報が入る。

ゴルフ場の開発会社、横浜マリンカントリーはトキワ自動車の新規顧客であり、佐々は反対運動のことも聞いていた。

 

なんでも、反対派の代表が変わる前はもっと強固に反対運動をしていたらしい。

そして、反対運動の旗振りをしていたのは横浜工科大学の森下だったのだ。

 

 

騒動の翌日、君嶋と佐々は横浜マリンカントリーの責任者、青野を訪ねた。

横浜マリンカントリーの事務所は工場から三十分ほど。

 

青野は、帝京大学のラグビー部出身で、それなりに知られていた選手だったらしい。

君嶋は反対派リーダー、苗場の名刺を見せる。

そして、反対派の以前のリーダー、森下のことそれとなく切り出した。

 

なんでも森下は昨年一杯で反対活動からは手を引いているらしい。

気難しい性格ゆえに面倒になったのかもしれない、と青野は言う。

 

君嶋は質問を一歩前へ進め、白水商船のタンカーが起こした座礁事故について聞く。

青野はカザマ商事の役職を兼ねていることもあり、白水商船がバンカーオイルと事故との因果関係を疑っていたことを耳に入っている。

そして、白水商船側から独自調査の結果、因果関係はなかったという報告をもらった、それが青野が把握している実のすべてのようであった。

 

 

青野を訪れた翌週、君嶋は反対派のリーダー、苗場を正式に面談をしていた。

苗場は開発規模の縮小を求める要望書を携え熱弁をふるう。

 

「この前、うまく行きかけたんだけどなあ」

苗場のひと言を、君嶋は聞き逃さなかった。

 

君嶋が苗場に問い詰める。

苗場はタンカーの座礁事故のことを知っており、なんでも森下がこっそり教えてくれたらしい。

 

苗場の話しが事実であれば、青野は森下が自社のバンカーオイルの調査を引き受けたことを知っている。

君嶋はいった。「彼はおそらく、真相を知っている」

 

 

翌日、君嶋は横浜マリンカントリーの青野を再訪した。

君嶋は、森下がバンカーオイルの調査を依頼されたことを知っていたのかと、青野に問い詰める。

 

知らなかったと言い張る青野だったが君嶋の追及に、

「ご迷惑をお掛けして申し訳ありません」

やがてそんな言葉が青野から漏れてきた。

 

 

トキワ自動車の取締役会では久々の大型議案、カザマ商事買収の件が俎上に載せられようとしいる。

案件を進めてきた滝川からの説明が始まり、それは締めくくりさながら、滝川の決意表明のようだった。

 

「よろしいでしょうか」

発言の許可する声が上がる。挙手しているのは、経営戦略室の脇坂だ。

 

脇坂はカザマ商事の企業精査に本当に問題がないかを問う。

そして、脇坂からカザマ商事の座礁事故に関する隠蔽の詳細が明らかにされる。

当然の如く大型買収案件は見送られ、取締役会は予想外の逆転劇のうちに、その幕を閉じたのだった。

 

【第三部】セカンド・ハーフ

トキワ自動車本社の面接会場で、ある男が三人の面接官を相手にしている。

その男は、紫門が君嶋に推薦した七尾圭太という男だった。

 

カザマ商事の一件で役員に移動があり、滝川が出世ラインから外れ、代わりに脇坂が常務取締役に昇進。

そして、ラグビー部の所管である総務部の責任者にもなるらしい。

今後、ラグビー部の存続に影響を与えることは間違いのないところだ。

 

ラグビーシーズンが始まる前の5月、トキワスタジアムでアストロズのイベントが開かれていた。

このイベントは昨年に続いて二回目。

親子ラグビー教室やジュニア・アストロズの試合、そしてメインイベント、アストロズの紅白戦が予定されていた。

 

トキワスタジアムは本番さながらの観客で埋め尽くされている。

紅白戦は、深紅のファーストジャージーを着たレギュラーメンバー組と、セカンドジャージーを着た控え組との戦いとなった。

 

試合はレギュラーメンバー組優勢で進められるものと思われたが、開始三分、スタンドにどよめきが起きる。

控え組10番がパスをインターセプトし、軽快なステップでタックルをかわしトライを決めたのだ。

 

トライを決めたのは、控え組のスタンドオフの七尾。

ちょっとした番狂わせが起ころうとしていた。

 

試合は一進一退の攻防を繰り広げる。

そしてフルタイムの笛が鳴ると、白熱した展開に健闘を讃える拍手が鳴りやまなかった。

 

 

サイクロンズ監督の津田は、アストロズの紅白戦を観戦していた。

七尾や佐々の活躍に危機感をおぼえるが、紫門の前では余裕の表情を見せる。

 

今シーズンはプレーオフに進出しなければアストロズとサイクロンズの対戦はない。

しかし、紅白戦を見る限りアストロズは進出してくる。

 

「しかるべき手を打つ」

津田の言葉に、サイクロンズGMの鍵原は意味ありげな笑みを浮かべる。

里村の携帯に鍵村から電話があったのは、それから数日がたった夜のことだった。

 

 

紅白戦の夜「多むら」での飲み会は通夜のようにしんみりしていた。

レギュラーメンバー組は浮かない表情を浮かべている。

控え組に敗れ、新人の七尾や佐々にもやられたのだから当然のことだったが、スクラムハーフで出場していた里村は、紅白戦の組み合わせや過去の起用方法で紫門に不満を抱きはじめていた。

 

 

その日、君嶋は本社の経営戦略室に脇坂を訪ねていた。

最初こそ笑顔で向か入れてくれたが、脇坂は君嶋に来年度以降のアストロズの予算縮小を伝える。

 

君嶋は反論するが、脇坂は全く聞き入れてはくれない。

予算縮小はアストロズの行方を左右するものであり、君嶋は脇坂こそ、アストロズにとっての真の敵であることを悟る。

 

そして、取締役会での脇坂のアストロズ強化の費大幅削減案が提案されたのをきっかけに、

「アストロズの強化費が今季限りで削られるかもしれない」

そんな噂が流れはじめた。

 

そんな中、話があると里村に呼び止められる君嶋。

「チームを辞めてサイクロンズに行きたい」

君嶋は予想外のひと言に驚く。

 

ラグビー選手としてよりよい環境を求めての決断だという里村。

突如の遺跡表明に、君嶋は動揺すると同時にと怒りを覚える。

 

さらに、里村は出場停止期間がなく移籍できる、移籍承諾書まで要求してきた。

君嶋は怒りの表情を里村に向ける。

里村はその後の柴門の説得にも応じず、移籍の意志は固かった。

 

里村がアストロズ最後の日を迎えた六月。

柴門から里村の移籍がチーム全員に報告される。

 

里村は移籍承諾書が出ないことを覚悟していた

しかし、岸和田は君嶋から受け取った移籍承諾書を差し出す。

 

驚きの表情を浮かべる里村。

移籍承諾書は出さない方針で決まっていた。

だが、岸和田をはじめチーム全員が出して欲しいと懇願し方針が変更になったのだった。

 

 

九月第一週の土曜日、アストロズはリーグ戦の開幕を迎えていた。

キックオフの午後七時を前に、トキワスタジアムはほぼ満席の状態。

 

新たに開設したアストロズ・ホームページからのチケット販売、会員数二万五千人を誇るアストロズ・ファンクラブ。

この二つの販売チャンネルを使い、協会から買い取ったチケットを売りさばいた結果。

肝心なことは、どこの誰が、どんなチケットを購入したのか把握できることだった。

 

選手たちが入場し、電光掲示板と場内アナウンスが出場選手を発表して盛り上げていく。

その時、会場にどよめきが起きる。

スタンドオフ七尾圭太がコールされたのだ。

 

浜畑じゃないのか。誰もがそう思ったに違いない。

攻撃の仕切り役、ハーフ団が二年目の佐々、一年目の七尾。

 

本当に戦えるのか。アストロズファンが首をかしげているのがわかる。

だが、それが単なる杞憂であることを、誰もが気付いていくのであろう。

そして、試合開始を告げるキックオフの笛が鳴った。

 

 

ノーサイドの笛が鳴り、スコアは三十六対十。

前半に三つ、後半に二つトライを決め、相手のトライを一つに抑え込む完勝だった。

 

「君嶋くん」

思いもよらない人物に声を掛けられる君嶋。

そこに立っていたのは、滝川だった。

 

本社の役員を外れ、業績の悪化した金融子会社の社長に転じたのは三月のこと。

そんな滝川がアストロズの試合を観戦すること自体、ありえないことのように思えた。

 

滝川とカザマ商事の件で話をしていたところ、君嶋はおかしな点に気付く。

脇坂が証拠として出した資金が振り込まれた銀行口座は、君嶋が用意した証拠ではなかったのだ。

 

「君を、横浜工場に飛ばしたのは、私じゃないからな」

滝川は意外なことを口にした。

呆然とする君嶋にそれ以上いわず去っていく滝川を見送ると、君嶋は選手たちの待つロッカールームへと急いだ。

 

 

君嶋は、カザマ商事買収が流れることになった取締役会の議事録を手にしている。

滝川との会話で引っ掛かった、証拠として提出された銀行口座の件を確認していた。

 

君嶋はすでに新たな職場へと移っていた青野へ連絡を取る。

しかし、代理人を通していたため新たな情報は得られなかった。

 

カザマ商事買収にあたり、トキワ自動車が代理人として指名していたのは東京キャピタルというM&A専門業者。

君嶋も経営戦略室時代に使ったことがあり、面識のある社長の峰岸へ連絡をした。

 

東京キャピタルの本社に峰岸を訪ねた君嶋は、そこで意外な話を聞く。

なんと、脇坂とカザマ商事社長の風間は高校時代の同級生で、買収話の間を取り持ったのは脇坂だったのだ。

 

意外な接点に驚く君嶋。

峰岸が風間に聞いた話によると、買収価格や森下教授の買収も脇坂のアドバイスだったのだ。

 

君嶋を横浜工場へ飛ばしたのも脇坂であるという峰岸。

すべては脇坂の計画を成就させるためのものだったのだ。

 

 

九月第三週の土曜日、アストロズはサンウォーリアーズに勝利し無傷の三連勝。

しかし、君嶋は収容人員二万五千人に対して、わずか二千八百人という観客動員数の少なさに苛立っていた。

 

その翌週開かれたプラチナリーグ連絡会議で、君嶋は協会側に噛みついた。

しかし、専務理事の木戸はまともに答える気がなく相手にしない。

君嶋は淡々と流れていく議事を茫然とやり過ごすしかなかった。

 

十月第三週、無傷のアストロズは第六節の大一番を迎えようとしていた。

その相手はこれまで全勝の中央電力サンダース。

第七節の相手が供に格下のため、この試合の勝者が実質、ホワイトカンファレンス一位となることはほぼ確実だった。

 

しかし、アストロズは中心選手の疲労や怪我でベストの布陣が組めない状況。

ここで柴門がとったのは、ここまで温存してきたベテラン勢の起用だった。

 

試合前の予想通り厳しい試合展開となったアストロズ。

前半からリードされる状況が続き、君嶋も重たい雰囲気を感じていた。

 

しかし、ベテラン勢の活躍もあり後半に反撃開始。

見事、逆転勝ちを収めたのだった。

 

その二週間後、アストロズにとっての事件が起きる。

脇坂が次の取締役会に、アストロズの予算縮小を提案する準備をしていたのだ。

このことを耳にした君嶋は、すぐに脇坂との面談の入れる。

 

翌日、脇坂に会い予算縮小を考え直してほしいとお願いする君嶋。

しかし、脇坂の考えは変わることはなかった。

 

 

十二月初旬の土曜日、アストロズはプレーオフ初戦をむかえていた。

相手はレッドカンファレンス二位の東京電鉄ブレイブス。

 

ブレイブスの成績は六勝一敗。

唯一の敗戦はサイクロンズで喫したものであり、拮抗した好ゲームが予想された。

 

だが誰もが予想した展開は、前半であっさりと覆される。

佐々と七尾を中心としたハーフ団により、相手ディフェンスを圧倒。

四十五対七と、会心の勝利を収めたのだった。

 

 

君嶋が、取締役会に呼ばれ本社に向かったのは、翌週木曜日の朝だった。

アストロズの予算縮小案が提出される運命の一日である。

 

入り口脇の壁に並べられた椅子のひとつにかける君嶋。

そして、脇坂が立ち上がり予算縮小案の説明が始まった。

 

アストロズの予算縮小の必要性を話す脇坂。

話しが終わると重苦しい雰囲気が会場を包み込んだ。

 

長くアストロズを支え、指示してきた島本さえ腕組みをし難しい表情のまま。

自体の危機を察した君嶋は、発言の許可を求めた。

 

島本に許可をもらい立ち上がった君嶋は、アストロズがファン獲得のためにしてきたことや成果が出てきていることなどを取締役たちに説明する。

君嶋が説明しているのは、アストロズの存在証明に他ならない。

 

コストでは測ることのできない価値を見出すだけの懐があるかないか。

いま問われているのはトキワ自動車という組織の真価であった。

 

君嶋の発言が終わると、島本がついに口を開く。

「君嶋の挑戦を、アストロズの挑戦を応援してやりたい」

 

島本の問いかけに、拍手が起きる。

脇坂の案を支持する声は最後まで上がらないまま脇坂の提出した議題は退けられたのであった。

 

「本日最後の議案に移ろう」

島本がなおも厳しい表情のまま宣言した。

 

議題には「コンプライアンス問題に関する報告」という漠然としたタイトルが付いている。

なんと、この議案は君嶋から提案されたものだった。

 

案件は、二月に否決されたカザマ商事買収事案についてのコンプライアンス問題。

君嶋が説明したのは、東京キャピタル社長の峰岸からの情報提供により明らかになった事実だった。

 

 

トキワ自動車の取締役会と同じ頃、飯田橋にあるホテルの一室でも、ひとつの会議が開かれていた。

日本蹴球協会理事会である。

 

二ヶ月に一度開かれる定例会議は、この日も大方の予想通り議事は淡々と進み、議題を一つを残すのみ。

「プラチナリーグ改革案」と題された最後の議題は、木戸から提案されたものだった。

 

改革案は、プラチナリーグのチーム数を減らした上でホームアンドアウェーのリーグ戦にし、チケット販売の一元化によるマーケティングの強化、地域密着型チームとしての再生を目指すというもの。

これは、君嶋の提出した改革案をベースにしたのもだったのだ。

 

専務理事の立場上、理事会の意向通り対応せざるを得なかったが、木戸個人は君嶋の意見に同感だった。

会長の富永はこの改革案に反対するが、木戸は怯まない。

 

伝統とアマチュアリズムを掲げ、日本のラグビーを停滞させてきた富永にラグビー協会が払った代償は計り知れなかった。

木戸は富永ではなく、その場に出席していた理事たちに向け、富永の会長解任を提案する。

 

「賛成!」

ひとりの理事がさっと立ち上がった。かと思うと、たちまち出席者が次々と起立していく。

そして、富永の会長解任は承認されたのだった。

 

 

十二月第三週の土曜日。

アストロズはサイクロンズとの優勝決定戦に日をむかえていた。

 

スタンドを埋め尽くす観衆の熱気は、ピッチサイドに立つだけで呑み込まれそうな迫力がある。

全勝チーム同士の激突に、スポーツ誌の一面を飾るなど、大きな盛り上がりを見せていた。

 

キックオフは午後二時。

電光掲示板にスタメンが発表され始めた。

 

アストロズは、ハーフ団に佐々、七尾を擁したベストの布陣。

一方のサクロンズは、十五人中七人を日本代表経験者で固めている。

そして試合開始の笛が鳴り、サイクロンズのキックオフで選手たちが一斉に動き始めた。

 

 

君嶋は今まで経験したことがない、息詰まる攻防を目の当たりにしている。

数多くの試合を観てきたが、この試合は特別だった。

 

まだ5分も経っていないのに、内容の濃密さと重厚感はケタ違い。

サイクロンズは得意とする多彩な連続攻撃を仕掛けてくる。

 

お互い譲らない展開が続いていたそのとき、サイクロンズ・スクラムハーフの里村が意表を突くキックで、ボールをふわりと上げた。

楕円のラグビーボールの予測不可能な動きは、サイクロンズに味方する。

 

サイクロンズのウイング11番の腕にすっぽりと収まったかと思うと、ディフェンスの隙を突き、あっという間に先制トライを決めた。

しかし、アストロズの選手たちは冷静そのもの。

落ち込んだり悲壮感を浮かべるものもなく、普段通りの表情の彼らがそこにいた。

 

ミスを突き相手陣内に入っていくアストロズ。

佐々から七尾にボールが渡る。

 

相手ディフェンスを鋭いステップでかわし、トップスピードで走り込んできたフルバックの岬に絶妙なタイミングでパスを通した。

岬はゴールポスト右側に走り込んみ、見事トライを決める。

君嶋は右の拳を握りしめた。

 

その後、里村にトライを決められスコアは七対十四と、サイクロンズ優位で試合は進む。

アストロズは、七尾が徹底的にマークされ思うように攻撃がつながらない。

結局、前半はペースを掴めないまま十対二十一と、スコア以上にアストロズ劣勢のまま終わった。

 

 

ハーフタイムを終え、選手たちがグランドにあらわれる。

アストロズは、フォワード三人を替え戦力をリフレッシュ。

 

と、その時スタンドが大きく沸いた。

選手交代で浜畑譲の名前がアナウンスされたからだ。

 

七尾と浜畑が同時にピッチに立つ。

アストロズは後半に勝負をかけてきた。

 

後半が始まり五分が過ぎた頃、ようやくアストロズに攻撃のチャンスがやってくる。

七尾から、クロスして走り込んできた浜畑へ、相手ディフェンスの乱れを突く絶妙なパスが通った。

 

パスを受け取った浜畑は、華麗なステップでディフェンスを一人抜き、サポートに来ていた岬へパスを出す。

もはや突進を阻むものは誰もおらず、ゴール左側に岬のトライが決まった。

 

十七対二十一。四点差。

これで試合は一気に分からなくなった。

 

しかし、アストロズに思わぬ事態が起きる。

七尾が相手ディフェンスに倒され、HIA、脳震盪の検査のための一時的な退場を余儀なくされたのだ。

 

アストロズは徐々に劣勢を跳ね返し、試合の主導権を握ろうとしていた。

だが、どこか頼りなげに見える。

七尾という司令塔を突如欠き、その喪失感を埋められていないようだった。

 

案の定、マイボールをスチールされ、痛恨のトライを決められたしまう。

コンバージョンキックの二点も追加され、十七対二十八となった。

 

「七尾がいれば」

後半三十分を過ぎた頃、どこかで歓声が沸き上がった。

 

タッチライン近くに立つ、10番を背負った深紅のジャージー姿。

七尾コールが沸き起こる。

 

七尾は相手ディフェンスを翻弄しながら右足を一閃。

ゴールラインの向こう側に落とす絶妙なキックだった。

 

猛然とそれに飛び込んだ岸和田が、抑え込んだ瞬間、大歓声が上がる。

ゴールほぼ正面のコンバージョンキックを、七尾が慎重に決めスコアは二十四対二十八。

再び四点差に詰め寄った。

 

アストロズがマイボールを保持する中、後半四十分を告げるホーンが鳴った。

ラストワンプレーとなり、攻撃が途切れたとき、試合が終わる。

 

七尾はパスを受けたときプレッシャーを受けないように後方に位置取りしていた。

裏に蹴り込むつもりだ。

 

その七尾にパスが渡る。

そのとき、七尾が蹴ったボールはとんでもない方向へ向かって低い放物線を描いた。

 

ほぼ真横に蹴られた、キックパスだった。

これにはサイクロンズも、二万人の観客全員が度肝を抜かれた。

 

裏へのキックを警戒していたサイクロンズの想像を絶する左サイドへのキックパス。

そのパスに一人の男が飛び込んできた。

フルバックの岬である。

 

パスを受け取った岬が走り込む。

しかし、サイクロンズの選手たちが岬に突進する。

今にもタックルされそうになった岬のフォローに回ったのは、キックと同時に猛ダッシュした七尾だった。

 

ゴールライン直前、サイクロンズの選手のタックルをハンドオフで一瞬にして地面にたたきつけたとき、勝負は決まった。

逆転のトライだ。

 

そのとき、君嶋は不思議なものを見た。

フルタイムを迎えたグランドでは、アストロズの選手たちが力尽きグランドに膝をつくサイクロンズの選手たちの手を取って立ち上がらせ、握手し、お互いの方を叩いて言葉を掛け合っている。

 

「これがラグビーか」

そのとき君嶋は思った。これこそ、ノーサイドの精神そのものだった。

 

ノーサイド

アストロズが優勝を果たした四ヶ月後。

君嶋は、二年数ヶ月に及ぶ横浜工場勤務から経営戦略視聴のポストに移動していた。

 

それまでは横浜工場長がアストロズの部長職を兼務するのが慣例であったが、新堂工場長の退職とともに、君嶋が引き継ぐことに。

それだけではない。前年にクーデターを起こした日本蹴球協会専務理事の木戸から理事就任の打診があり、君嶋はそのオファーを受けたのだ。

 

アストロズには、柴門琢磨という名称に憧れ、また、実力と人気を兼ね備えたチームカラーに惹かれ、多くの若い才能が集結しつつある。

五月、サイクロンズの津田から練習試合の申し入れがあり、感謝デーのメインイベントで行うことになった。

 

一万人の観客が集まったスタジアムで、君嶋は声を掛けられる。

振り向くとそこには滝川が立っていた。

 

滝川はいま、金融子会社の社長として、大車輪の活躍を見せていた。

その実績を携え、近いうちにトキワ自動車に戻り、島本の後任として社長の椅子に座るのではないかと君嶋は読んでいる。

一方、脇坂は役職を解かれ、一連の動きを裏で牽引していた事実を重く見、特別背任で告訴すべきか顧問弁護士との調整に入っていた。

 

これから必要なことは、現状を打破し、日本のラグビーが本当に強くなる仕組みを作ること。

そのための一歩は、すでに始まっている。

 

キックオフの笛が鳴り、アストロズの選手が駆け出すと、スタンドの大歓声が選手たちを向かい入れた。

 

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